エンジンが溶けない理由

 エンジンは触れない事からも分かる通りとても熱くなる。燃焼温度は2000℃を超え鉄すらも溶かしてしまう程の高温だ。それに対して圧縮する役目を持っており一番その熱を受けるであろうピストンは基本的にアルミで出来ており融点は鉄よりも低い660℃となっている。普通に考えると2000℃を超える燃焼に晒されたらピストンは溶けるはずだか実際には溶けていないそれは何故かというと「断熱境界層」という2mmほどの空気のベールに包まれるから。燃焼の火炎とピストンを始めとしたエンジンの間に空気の膜が形成される事でエンジンが直接晒されずに済み溶けない。

 また「ノッキングでエンジンが壊れる」と言われるのも断熱境界線が関係しており、設計上の点火と別の場所で異常燃焼が起こってしまうと、それによる圧力波で断熱境界層を破ってしまう。この膜が破られる事でピストンを始めとしたエンジンの各部が燃焼の火炎に直接晒されてしまい溶けてしまう。このノッキングによって温度境界層が破壊され溶け、圧力波が縦横無尽に反射してシリンダー内を傷つける。更にまずいのはプレイグニッションを誘発してしまうこと。ノッキングによる断熱層破壊により熱せられた部分が点火装置となり、あちこちで勝手に点火と膨張を始め、その後ピストン溶解、コンロッドの変形、エンジン焼き付きなどにつながりエンジンを壊してしまう理由。

 

 

Author: 工場長(和田悠輝)